不動産取得税は相続時に原則非課税!ただし課税される「例外ケース」と注意点を解説

大切なご家族を亡くされ、相続手続きを進める中で、「不動産取得税」という言葉を目にして、納税の義務があるのかどうか不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、これから相続に備えようとしている方にとっても、不動産にかかる税金は大きな関心事の一つでしょう。

不動産取得税は、原則として相続による不動産の取得には課税されません。しかし、一部のケースでは課税対象となることがあり、注意が必要です。また、不動産取得税が非課税であっても、相続税や登録免許税など、他の税金は発生する可能性があります。

本記事では、不動産取得税が相続時に非課税となる原則的な理由と、課税対象となる例外ケースについて、分かりやすく解説します。さらに、不動産取得税以外に相続で発生する主な税金や、相続した不動産をどう扱うかという選択肢についても触れていきます。ご自身の状況を整理し、適切な判断をするための材料としてご活用ください。

目次

不動産取得税とは?相続における原則と目的

不動産取得税は、土地や家屋といった不動産を取得した際に、その不動産の所在する都道府県が課税する地方税の一つです。ここでは、不動産取得税の基本的な考え方と、相続における原則的な取り扱いについて解説します。

不動産取得税の基本的な考え方

不動産取得税は、不動産の「取得」行為に対して一度だけ課される税金です。ここでいう「取得」とは、有償・無償、登記の有無にかかわらず、所有権を取得する一切の行為を指します。具体的には、売買、贈与、新築や増改築などが挙げられます。

この税金は、不動産の価格(固定資産税評価額を基準とする)に一定の税率をかけて算出されます。税率は、土地や住宅用家屋では原則として4%(2024年3月31日までは特例で3%)、住宅以外の家屋では4%です。軽減措置が適用されるケースもあります。

(不動産取得税の納税義務者)
地方税法 第七十三条の二 不動産取得税は、不動産の取得に対し、当該不動産の所在する都道府県において、当該不動産を取得した者に対し、課する。

引用元:e-Gov法令検索「地方税法」

相続による不動産取得が原則非課税となる理由

結論から申し上げると、通常の「相続」によって不動産を取得した場合には、不動産取得税は課税されません。

この理由は、不動産取得税における「取得」の概念にあります。不動産取得税が対象とする「取得」は、新たに不動産の所有権を得る行為を指します。しかし、相続は、被相続人(亡くなった方)の財産や権利義務を、相続人が包括的に承継する行為とみなされます。つまり、被相続人の所有権が相続人にそのまま移転するものであり、新たな取得とは捉えられないため、不動産取得税の課税対象にはならないとされているのです。

具体的には、地方税法において、相続による不動産の取得は非課税と定められています。

(非課税の範囲)
地方税法 第七十三条の七 不動産取得税は、次に掲げる不動産の取得に対しては、課さない。
一 相続による不動産の取得

引用元:e-Gov法令検索「地方税法」

この規定により、遺産分割協議を経て相続人が不動産を取得した場合や、法定相続分に応じて共有名義で取得した場合など、原則として相続による取得であれば不動産取得税はかかりません。

相続時でも不動産取得税が課税される「例外ケース」

原則として相続による不動産の取得は非課税ですが、以下のようなケースでは、不動産取得税が課税されることがあります。ご自身の状況がこれらに該当しないか、確認しておくことが重要です。

ケース1:相続人以外への遺贈

遺贈とは、遺言によって財産を無償で他人に与えることを指します。遺贈には、特定の財産を指定して与える「特定遺贈」と、財産の割合を指定して与える「包括遺贈」があります。相続人に対して遺贈を行う場合、実質的には相続と同じとみなされるため、不動産取得税は非課税です。

しかし、相続人ではない第三者に対して不動産を遺贈する場合には、その取得行為は「相続」ではなく「贈与」とみなされ、不動産取得税の課税対象となります。

(非課税の範囲)
地方税法 第七十三条の七 不動産取得税は、次に掲げる不動産の取得に対しては、課さない。
(中略)
ただし、相続人以外の者が遺贈により取得した不動産については、この限りでない。

引用元:e-Gov法令検索「地方税法」

例えば、長年お世話になった知人に不動産を遺贈する、あるいは特定の団体に寄付する目的で遺贈するといったケースがこれに該当します。この場合、遺贈を受けた側(受遺者)に不動産取得税の納税義務が生じます。

ケース2:死因贈与契約による不動産の取得

死因贈与契約とは、贈与する人が死亡したときに効力が発生する贈与契約のことです。遺贈が遺言による単独行為であるのに対し、死因贈与は贈与者と受贈者(財産を受け取る人)との間の「契約」である点が異なります。

この死因贈与契約によって不動産を取得した場合も、地方税法上の「相続による取得」には該当せず、不動産取得税の課税対象となります。死因贈与も無償で財産が移転する点は贈与と同様であり、新たに所有権を取得したとみなされるためです。

たとえ受贈者が相続人であったとしても、死因贈与契約による取得であれば、不動産取得税が課税される可能性がありますので注意が必要です。

不動産取得税以外に相続時にかかる税金

不動産取得税が非課税となるケースでも、不動産の相続においては他の税金が発生します。これらを正確に把握し、準備を進めることが重要です。

相続税

相続税は、亡くなった方(被相続人)から財産を相続したときに、その財産の合計額が一定の基準(基礎控除額)を超える場合に課される国税です。不動産だけでなく、預貯金、有価証券、貴金属などのすべてのプラスの財産から、借入金などのマイナスの財産を差し引いた純資産に対して課税されます。

基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。この基礎控除額を超えた部分に相続税が課税され、その税額は相続財産の総額や法定相続人の構成によって変動します。

(相続税の課税の範囲)
相続税法 第九条 相続又は遺贈により財産を取得した場合においては、当該財産を取得した個人に対し、相続税を課する。

引用元:e-Gov法令検索「相続税法」

相続税の計算においては、不動産の評価額が重要な要素となります。不動産の評価額には、固定資産税評価額、相続税評価額、不動産鑑定評価額など複数の種類があり、それぞれ目的や算出方法が異なります。相続税の計算には「相続税評価額」が用いられます。不動産の種類や状況に応じて評価方法が複雑になるため、専門家への相談を検討することも有効です。「不動産鑑定評価と固定資産税評価:相続・売却で知っておきたい使い分けと注意点」や「固定資産税評価額と相続税評価額の違いとは?不動産相続で知るべき重要性を解説」も参考にしてください。

また、配偶者には「配偶者の税額軽減」という特例があり、一定の範囲内で相続税が非課税となる場合があります。この特例を最大限活用することで、相続税負担を大きく軽減できる可能性があります。「配偶者控除を最大限活用した相続不動産の分け方:生前対策から選択肢まで徹底解説」で詳しく解説しています。

相続税の申告と納税には期限があり、原則として相続開始を知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10ヵ月以内に行う必要があります。

登録免許税

登録免許税は、不動産の名義変更など、登記を行う際に国に納める税金です。相続した不動産を相続人の名義に変更する「相続登記」を行う際に発生します。

登録免許税の税額は、不動産の固定資産税評価額に一定の税率をかけて算出されます。相続登記の場合の税率は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。

(課税物件)
登録免許税法 第2条 次に掲げる行為で登記、登録、特許、免許、許可、認可、承認、認定若しくは指定(以下「登記等」という。)を受けるものには、この法律により、登録免許税を課する。

(登録免許税の課税標準及び税率)
登録免許税法 別表第一 
一 登記又は登録
 イ 土地に関する登記
  1 所有権の保存又は移転の登記
   (1) 相続又は法人の合併による所有権の移転の登記については、不動産の価額の千分の四

引用元:e-Gov法令検索「登録免許税法」

相続登記は2024年4月1日から義務化されており、正当な理由なく怠ると過料の対象となる可能性があります。名義変更をせずに放置していると、将来の売却や活用が困難になるだけでなく、相続人が増えることで権利関係が複雑化し、さらなるトラブルにつながるリスクもあります。早めに手続きを進めることが大切です。「複数回の相続で複雑化した不動産の名義整理|放置リスクと円滑な手続きの選択肢」もご参照ください。

固定資産税・都市計画税

固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産(土地・家屋・償却資産)の所有者に対し、市町村(東京都23区内は都)が課する地方税です。都市計画税は、市街化区域内に不動産を所有している場合に、固定資産税と合わせて課税される税金です。

相続によって不動産を取得し、その後も引き続き保有し続ける限り、毎年固定資産税・都市計画税が発生します。納税義務者は、1月1日時点の登記簿上の所有者となりますので、相続登記が完了していれば、新たに名義人となった相続人が納税義務者となります。相続登記が完了していない場合は、現状の登記名義人またはその相続人が納税義務者とみなされます。

(固定資産税の納税義務者)
地方税法 第三百四十三条 固定資産税は、固定資産税課税台帳に登録された土地、家屋又は償却資産の所有者に対し、その固定資産所在の市町村において課する。

引用元:e-Gov法令検索「地方税法」

これらの税金は、不動産を保有している間の継続的な負担となるため、不動産の維持費用全体を考慮する上で重要な要素です。「相続した不動産の管理費用|固定資産税以外に注意すべき負担と対策」で管理費用についてさらに詳しく解説しています。

相続した不動産の3つの選択肢と税金以外の考慮点

相続によって不動産を取得した際、その不動産をどう扱うかという問題に直面します。選択肢は大きく分けて「売却する」「活用する(賃貸に出すなど)」「何もしない(そのまま保有する)」の3つが考えられます。それぞれの選択肢にはメリット・デメリットがあり、ご自身の状況や将来の展望、他の相続人との関係性などを総合的に考慮して判断することが大切です。

選択肢1:売却(換価)する場合

相続した不動産を売却して現金化する選択肢です。

  • メリット
    • 現金化することで、遺産分割がしやすくなります。特に、複数の相続人がいる場合や、相続税の納税資金が必要な場合に有効です。
    • 不動産の管理にかかる手間や費用(固定資産税、修繕費など)から解放されます。
    • 将来的な市場変動リスクや空き家リスクを回避できます。
  • デメリット
    • 売却時に「譲渡所得税」が発生する可能性があります。取得費や売却費用を差し引いた利益(譲渡所得)に対して課税されます。
    • 不動産の売却には時間がかかる場合があり、市場価格の変動リスクも伴います。
    • 故人との思い出の品を手放すことに対する心理的負担があるかもしれません。
  • 向いている人
    • 相続人が複数いて、公平に遺産を分けたいと考えている方。
    • 相続税の納税資金や、他の費用に充てるための現金が必要な方。
    • 遠方に住んでいて不動産の管理が難しい方や、管理の負担をなくしたい方。
    • 将来的な不動産価格の下落リスクを避けたい方。

売却を検討する際は、複数の不動産会社に査定を依頼し、適正な市場価格を把握することが重要です。「相続不動産の査定、複数社比較で何が変わる?注意点と賢い活用法を解説」や「相続した不動産の現況調査報告書:作成のメリットと最適な活用法」も参考に、情報を収集しましょう。

選択肢2:活用(賃貸など)する場合

相続した不動産を賃貸物件として貸し出したり、駐車場として活用したりして収益を得る選択肢です。

  • メリット
    • 継続的な家賃収入や使用料収入を得ることができます。
    • 不動産を資産として有効活用でき、将来的に売却する選択肢も残せます。
    • 賃貸経営における必要経費は所得から控除できるため、所得税の節税につながる可能性があります。
  • デメリット
    • 賃借人の募集、契約管理、修繕対応など、管理の手間や費用が発生します。
    • 空室リスクや家賃滞納リスク、老朽化による修繕費用負担などがあります。
    • 得られた家賃収入には所得税や住民税が課税されます。
  • 向いている人
    • 定期的な収入を得たいと考えている方。
    • 不動産の管理に手間をかけられる方、または管理を専門業者に委託できる方。
    • すぐに売却する必要がなく、将来的な活用方法を模索したい方。
    • 現金を保有するだけでなく、資産として不動産を持ち続けたい方。

アパートなどの収益物件を相続した場合は、建て替えやリノベーションによる価値向上も選択肢の一つです。「相続した古いアパート、建て替えと売却のどちらを選ぶ?判断材料と選択肢を解説」で詳しく検討しています。また、家族信託を活用することで、不動産の管理を家族に任せることも可能です。「家族信託における不動産管理のすべて|受託者の役割と責任、具体的な実務を解説」も参考になるでしょう。

選択肢3:何もしない(保有)する場合

当面の間、相続した不動産をそのまま所有し続ける選択肢です。

  • メリット
    • 現時点では大きな手間や費用をかけずに、将来的な選択肢(売却・活用)を残すことができます。
    • 故人との思い出の場所を手放さずに済みます。
    • 市場価格が回復するまで待つことができます。
  • デメリット
    • 固定資産税・都市計画税、火災保険料、定期的な管理費用(草刈り、清掃など)が発生し続けます。
    • 空き家の場合、建物の老朽化が進み、維持管理が不十分だと特定空き家に指定されるリスクや、周囲に迷惑をかける可能性があります。
    • 共有名義の場合、他の相続人との意見の不一致により、将来的な売却や活用が困難になる可能性があります。
  • 向いている人
    • 当面は利用する予定がある方、または将来的にご自身やご家族が利用したいと考えている方。
    • 遺産分割協議がまだ完了しておらず、一時的に保有する必要がある方。
    • 現在の市場価格が安く、将来的な価格上昇を期待して待つことができる方。
    • 固定資産税や管理費用が大きな負担にならない方。

何もしない選択肢をとる場合でも、不動産の維持管理は怠らないように注意が必要です。特に、空き家となる場合は、定期的な巡回や手入れが大切です。管理が困難な土地の場合には、相続土地国庫帰属制度の利用も選択肢の一つとして検討できますが、利用には厳しい条件があります。「政府の相続土地国庫帰属制度|利用条件とデメリットを専門家が徹底解説」も参考にしてください。また、再建築不可の土地などの特殊な不動産の場合も、その特性を理解した上で判断することが重要です。「再建築不可の土地を相続したら?売却・活用・保有の選択肢と、状況に応じた検討のヒント」で詳しく解説しています。

Q&A:不動産取得税と相続に関するよくある疑問

不動産取得税と相続に関して、よくある疑問にお答えします。

Q1:相続登記をしないとどうなりますか?

A1:相続した不動産について相続登記をしないままだと、以下のような不利益が生じる可能性があります。

  • 不動産の売却や担保設定ができない:不動産の所有権が明確でないため、売買契約や金融機関からの借り入れの担保とすることができません。
  • 新たな相続でさらに複雑化:相続登記をせずに次の相続が発生すると、さらに多くの相続人が関与することになり、権利関係が複雑化します。遺産分割協議が困難になり、手続きに多大な時間と費用がかかる恐れがあります。
  • 義務化と過料のリスク:2024年4月1日から相続登記が義務化されました。正当な理由なく相続の開始および所有権の取得を知った日から3年以内に登記申請をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

相続登記は、不動産の所有権を公に示すための重要な手続きです。放置せず、速やかに手続きを進めることが求められます。

(所有権の登記の申請の義務等)
不動産登記法 第七十六条の二 相続による所有権の取得の登記は、その登記名義人に対し、その取得の日から三年以内に申請しなければならない。

引用元:e-Gov法令検索「不動産登記法」

Q2:遺言書で相続人以外に不動産を遺贈した場合も非課税ですか?

A2:いいえ、相続人以外の方に不動産を遺贈した場合、原則としてその取得には不動産取得税が課税されます。先述の通り、地方税法において「相続人以外の者が遺贈により取得した不動産については、この限りでない(非課税としない)」と明記されているためです。

遺言書を作成する際には、遺贈を受けた方の税金負担も考慮に入れる必要があります。遺贈を受ける方が、不動産取得税を支払うことになります。生前のうちに、遺贈の意図と同時に、税負担についても情報提供や相談を行うことで、後のトラブルを避けることができるでしょう。

まとめ

相続による不動産の取得は、原則として不動産取得税の課税対象にはなりません。しかし、相続人以外への遺贈や死因贈与契約による取得など、例外的に課税されるケースがあるため、ご自身の状況が該当しないか確認することが大切です。

不動産取得税以外にも、相続税、登録免許税、固定資産税・都市計画税など、不動産を相続する際には様々な税金が発生します。これらの税金を理解し、納税の準備を進めることが、円滑な相続手続きの鍵となります。また、相続した不動産を「売却する」「活用する」「保有する」という3つの選択肢には、それぞれ異なるメリットとデメリットがあり、税金以外の考慮点も多岐にわたります。ご自身の状況やご家族の意向を十分に踏まえ、最適な選択を検討することが重要です。

本記事でご紹介した内容は、一般的な制度や考え方を整理したものです。

不動産の評価や負債の有無、ご家族の関係性など、個々の状況によって最適解は異なります。

ご自身のケースを客観的に整理したい場合は、初回相談を無料でお受けしています。

状況の確認が必要な方は、お気軽にお問い合わせください。

本記事の内容は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案については必ず専門家にご相談ください。

シェアする
  • URLをコピーしました!